【連載】第四回 セリフ回しのポイントとは1(池田六郎)

セリフ回しのポイント

今回はマンガにおけるセリフについて考えていきます。

極論を言えば、マンガにセリフは必要ありません。
マンガの元祖的存在に国宝「鳥獣人物戯画」がありますが、これにはセリフはありません。 現在でも、ヒトコマ漫画、風刺漫画などではセリフが無いことが多いですし、ストーリーがあるマンガでも、全くセリフ無しのものもあります。

しかし、マンガで描かれる「感情表現」「様々な説明」「ストーリー進行」などを絵だけで行うのはかなり難しく、無理もあります。 ですので、現在、ほとんどのマンガは絵とセリフを使って表現されます。 映画やTVドラマ、舞台演劇などでは役者の演技がメインであるのと同様に、マンガはあくまでも絵がメイン、セリフは補助的なものであることを、製作者は意識する必要があります。

一方、近年増えてきた、政治や経済、科学や医学など、専門分野を解説することを目的としたマンガのように、セリフや説明の文字がメインとなるものもあります。 ※小林よしのりさんの「ゴーマニズム宣言」シリーズなど

ダメなセリフのパターン

マンガも、映画や舞台演劇と同様、作劇法(ドラマツルギー)に従って作られるものなので、それらに共通したセオリーがあります。 まずは、作劇法のセオリーに基づいたダメなセリフの例を挙げていきます。

・過剰セリフ
  シーンを見ればわかることをキャラにしゃべらせる。
  「うわぁ、なんて大きいんだ!」
→強調とギャグ気味にわざとやることはあり得る。

・説明セリフ
  「もう12時か……。○○ちゃんが心配だから探してくるわ」
→セリフで言うのではなく動きや演出で説明することを考える。

・英会話セリフ(電話セリフ、受けセリフとも言われる)
  「おお、山崎くんじゃないか」
  「あ、佐藤先生」
  「元気かね?」
  「はい、元気です。先生はいかがですか」
  「見ての通り、相変わらずだよ。奥さんも元気かね?」
  「はい、元気です」
→実際にはよくある会話なので、一見問題無いように見えますが、マンガで書くと非常にムダです。

・無個性セリフ
  「おはよう」「はい、おはよう」
→個性がないならシーンとして出す必要がない。

・過小セリフ
  「おお、高橋じゃないか! 5年……いや、7年ぶりか!」
  「ああ、久しぶり」
→7年ぶりの再会なのに、これではどんな関係だったのかわからない。

・聞いたか坊主
  「ねぇ、知ってる? 黒田部長って総務の飯田さんと不倫してるんだって」
→時代劇の中で、チョイ役の町人とお坊さんの会話でストーリーを説明するシーンが多用されたので、このように言われる。現在では給湯室のOL、喫煙所のビジネスマンなど。便利なのでよく使われるが多用は避けたほうがいい。

・抽象セリフ
  「ああ、景色がきれいだなぁ!」
→どうきれいなのかわからない。この後、芝居が続いて状況が描かれれば問題無いが、これで終わってはいけません。

・告白セリフ
  「おれは世界一の殺し屋だ!」→ギャグならあり?

・分裂セリフ
  「ほう、これは素晴らしいワインだ。ところで今年も阪神は弱いね」
→実際の会話としてはあるかもしれないが、ストーリーで出ているとおかしい。

・独白セリフ
  「くそ、奴はすでに古代魔法の封印を解いていたのか!」
→頭の中の声が口に出ているパターン。誰にも聞かせていないセリフ。アニメなどの影響でありがちですが、本当はダメです。

・長セリフ
  「そう、俺がこの犯罪を犯すことを決心したのは、今を去ること15年前、
   お前が俺を裏切ったその時から俺の人生はお前に対する復讐に染まったのだ!」
→こういうのも無くはないですが、基本的にはダメです。

これら「ダメなセリフ」といっても、実際の作品ではよく見ますよね。つまり、状況や使い方によって、普通に使えたり、ギリギリセーフだったりします。要は「意識して使う」「正しい使い方を理解する」ということだと思います。

また、セリフを書く上で気を付けておくとよいこととして、

・表情や体の動きを意識する。(身振り手振り)
・セリフの速さの緩急、声の大きさ、方言など。
・感情や状況を盛り込む。(喜怒哀楽、時間制限、危険な場所、天候など)

などがあり、逆にダメなセリフのパターンとして、動きが無い、無表情、場所が平凡、などもよく見られます。 天気は晴れで日中、棒立ちのキャラ2体が延々話をしているシーン、アマチュアの作品ではよく見かけます。 雨を降らす、危険な場所でしゃべらせる、机を叩く、頭をかきむしる、極端な早口や逆に遅すぎる、関西弁や東北弁、英語まじり、などなど、色々工夫して見て下さい。

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