【連載】第五回 セリフ回しのポイントとは2(池田六郎)

「いいセリフ」のパターン

前回は「ダメなセリフ」について考えてみましたが、今回は逆に、よいセリフについて考えてみましょう。

1.「自然な会話」にしない

リアルの生活での会話はスムーズで自然な会話が求められますが、マンガではそうではありません。なぜなら、エンターテインメント作品は「劇的」でなくてはならないからです。 実際の生活では、トラブルの無い通勤通学、一人で無言で食べる昼食など、特に変化の無い日常生活は当たり前ですが、それをマンガで描いても面白くありません。 もちろん、その後に起こる異常事態との対比として平凡な日常を描くことはあり得ますが、それこそ絵や動きで表現すべきもので、セリフで語らせることではありません。

・かみ合わない
→実際の会話は相手の返答を予想しているものだが、それに該当しないパターン。
横柄・バカ丁寧・知ってるはずなのに知らない・知らないはずなのに知ってる。
・話の前提を知らない→複雑な物事の説明に便利なパターンです。
・話を聞いてない、話の腰を折る。
・何かしながら話す→キャラを動かす・歩きながら・走りながら・食べながら
・嘘をつく
・逆の意味のセリフ(後ほど説明します)
・勘違い、聞き間違い
・話を忘れる
・人数を増やす→別の話が加わる。別の話に変わってから元に戻る。
・無口、しゃべらない
・感情の振れ幅を極端に大きくする
・場所を変える(安全・危険・有利・不利)

2.キャラクターを生かすセリフ

・一人称に個性を与える。(若者なら僕、老人ならワシ、とかはダメ)
・性格や特徴、生まれ育ちによる話し方
→登場人物毎に話し方の癖をつける。方言・外国語・変な表現、など。
・助動詞(語尾)の使い方を使い分ける。
・年齢によって使い分ける。(登場人物に年齢の幅を加える、一人だけ子供とか)
・性別によって使い分ける。(男女を変えてみる)
→わざと逆にするのも有り
若いのに年よりくさい・僕っ子・俺っ子・怒っていると逆に丁寧、など。

3.会話による説明シーンを退屈にしない方法

・会話と行動を別にする
→言ってることとやってることに関連性が無い。
料理を作りながら説教、とか。

最後に「名セリフ」「ドラマチックなセリフ」について、いくつか例をあげてみます。

4.キャラクター系:「名セリフ」として一番よく見るが最も難しい。

 「海賊王に、俺はなる!」
 「お前はもうすでに死んでいる」など。
魅力的なキャラクターがあってこそのセリフでしょう。

5.説明不足系:わざと詳しく説明しない

(ほんとにあった怖い話 夏の特別編2018より)
 佐々木「アパートの家賃、駅近で広ければ高い、遠くて狭ければ安い」
 佐々木「これは分かるよね?」
 駒田「……」
 佐々木「駒田君ってさ、今も音楽やってるの?」
 駒田「うん? まぁね。なんで?」
 佐々木「いや、もうちょっと家賃を高くできたらなって」
 駒田「それでもいいけど……マリエが大変でしょ」
→このセリフだけで自分でお金を出さない、「ヒモ」っぽい感じを出している。

6.逆説系:わざと反対のことを言う。

(コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命より) 田沢「……そのブローチ」
はるか「はじめてのプレゼント、あなたからの」
田沢「ださいな……、今見ても。でも初めて着けてくれた」
はるか「後悔してる」
田沢「えっ?」
はるか「もっと早く付ければよかった」
はるか「たったこれだけのことであなたは笑ってくれるのに」

田沢「怖いんだ…… 外見も中身も毎日、どんどん醜くなってゆく自分が……」
はるか「そうね」
はるか「あの頃のあなた、輝いてた。いつもずっと私の前、歩いてた。きっとそこに憧れた」
はるか「あなたは確かに変わった。でも、好きっていう気持ちは少しも変わらないの」
はるか「だからつらい……」

(うしおととら:藤田和日郎)
真由子「私ね……4代目のお役目様なんだって。白面がまたどこかで眠りについたら、
 私も長生きして見張るんだって……」
真由子「百年たっても二百年たっても、とらちゃんなら私を守ってくれるよね」
トラ「……守らねぇよ」
真由子「えっ…」
トラ「百年だと、二百年だとぉ…。今、白面をぶっ倒しゃいいじゃねぇか!」
トラ「お前がそんな役につくわきゃねぇ! 
 おまえはまっとうに生きて、わしに食われるんだよ」
トラ「クソうしおが何やってんだよ! おまえなら何とかできるだろうが!」

受ける側が予想に反した答えをすることで、読者にインパクトを与えています。

おわりに

以上、セリフについて、原作者が考えていることをまとめてみました。 少し専門的ですが、知っているとよりマンガが楽しめる、また広告マンガへの評価基準の一つになるかもしれません。

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