【連載】第二回 漫画の脇役の魅力とは(イツキ)

漫画テクニック
第二回 漫画の脇役の魅力とは

こんにちは!漫画家のイツキです!
今回は漫画の脇役についてのお話です。

皆さんも漫画を読んでいて、気が付いたら主人公よりも脇役のほうが好きって思った事はありませんか? そんな魅力のある脇役についてご紹介します。(正確には、筆者の好みの脇役のご紹介かもしれません・・・笑)

主人公と対比になる脇役

たとえば恋愛漫画で言いますと、主人公が好きな男の子と上手く行かない時などに登場する男の子などは意外と読者からの人気が高いと思います。

主人公が落ち込んでるときに、意中の男の子よりも熱心に主人公に対して寄り添い、主人公の為に動いてくれる一途タイプです。 たくさん主人公に尽くすのですが、最終的には主人公に振られます。 悲しいですね・・・笑

実際の漫画でご紹介すると、「となりの怪物くん」に登場する「ヤマケン」は人気があるのではないでしょうか。

主人公「シズク」は勉強ばかりしていて、非常にドライな女の子です。そして相手役の「ハル」は勉強をしなくても勉強ができ、イケメンの男の子です。 ハルの欠点は【人の空気を読めない・距離の取り方がわからない】というところです。 しかし、ハルはドライなシズクにどんどん近づいていきます。「人の空気を読めない」というハルの欠点があるからこそ、空気を読まず人の心に近づけたというような感じでしょうか。

「ヤマケン」は元々ハルを利用していたイジワルな男の子として登場します。
この段階では読者目線では、「ただのモブキャラ」くらいな印象でしょう。
しかし、ストーリーが進むにつれ、何だかんだ登場回数が増えます。
「ヤマケン」はプライドが高く、努力家です。そして、人の空気を読んでうまく会話できる性格で、常識人的立場ですね。
シズクの事を最初は「ダサイ女」としてしか見ておりませんでしたが、ドライなシズクがハルに対して恋心を抱いているのに気付いてから、シズクの事を気にかけていきます。
「ヤマケン」はシズクの恋の相談役的な立場になってしまいます。
最初は内心バカにしながら話を聞いているヤマケンでしたが、最終的には「なんでハルなんか好きなんだ!俺ならお前の事をわかってやれる!」という気持ちになるんですね。

ヤマケンを見ていると、とても人間らしくて、感情移入しやすいと思います。 ハルの性格はぶっ飛んでいて、わかりにくいですが、ヤマケンはとても身近にいそうなキャラクターです。

「ヤマケン」の魅力は、読者と同じ思考ができるところだと思います。 ハル【常識はずれの行動多い・感情的】一方、ヤマケン【常識に沿った行動・理性的】という対比をする事で、より一層主役を引き立てていますね。

このように、主人公と対比となるキャラクターを出す事によって、読者が感情移入しやすくなっていると思います。

恒例パターンがある脇役

ヤンキー漫画「今日から俺は!!」に出てくる「今井」は主人公「三橋」のライバル的なキャラです。 ライバルと言っても三橋と今井は何だかんだ仲が良いです。

真面目にお互いをライバル視しているわけではなく、今井が一方的に三橋をライバルとして見ているんですね。 三橋はいつもそんな今井を騙して、今井は簡単にそれに引っかかってしまいます。 しかし、お互いが困っているときは気が付けば助け合っている存在です。

今井が三橋に騙されるのは毎回恒例のようになっており、それでも毎度三橋を信用してしまうおバカな今井。 読者は今井が出てくるだけで、「今回はどうやって騙されるんだろう」と期待してしまいますね。 今井のように出てくるたびに展開パターン(毎度騙されるなど)があるキャラクターですと、読者におなじみ感が湧き、愛されキャラとなるでしょう。

脇役は読者に近い存在!

漫画の主人公は読者が憧れる存在であったり、普通の人とは違う何かを持っていたりする事が多いと思います。

・すごくかっこいい、可愛い
・特殊能力を持っている
・普通じゃ考えられない発想ができる
  ・そもそも人間じゃない etc・・・

しかし主人公はそんな凄い能力や容姿によって読者から遠い存在になってしまう事があります。 別の言い方にすると「現実味が薄い」という事ですね。

そんなときに脇役のキャラクターが主人公と関わっている事によって、「自分だったら脇役と同じ考えかも」「この脇役が居るから主人公の良さが出ているな」と感じる方もいるのではないのでしょうか。

脇役キャラが読者と同じ考えや、感情を抱く事で「読者と距離が近く」なるんですね。

また、逆のパターンで、脇役が主人公より優れている事もありますね。 周りの脇役が優れているからこそ、主人公の「目標」になったり、主人公に「努力」をさせる展開を作ってくれます。 この場合は、読者は主人公に対して共感を抱きやすいのではないでしょうか。

おわりに

今回は脇役キャラの魅力をお話ししました。 筆者は漫画を描いていると、どうしても主人公の事を一番に考えて書いてしまいます。 しかし、自分が読者になって考えると、意外と心に残るのは主人公と接点の多い脇役の方だったりするのだなと気づきました!

皆さんも「どんな脇役が好きかな?」ともう一度考えてみると、より一層漫画が面白く感じられると思います!