【連載】第二回 マンガの「構成」について(青木健生)

漫画テクニック
連載第二回 マンガの「構成」について

はじめに

こんにちは!漫画制作者の青木健生です。今回はマンガの「構成」についてお話します。
どの順番でシーンを展開して、ストーリーをつなげるか。
マンガ広告を制作するにあたっても、読者にテーマや題材の魅力をしっかり伝えるためには「構成力」は非常に大事です。ぜひ参考になさってください。

「起承転結」って?

ストーリーを4つに分ける構成法が、「起承転結」です。

「起」とは一番最初のシーン(場面)、つまりトップシーンのことです。
特にマンガにおいては「トップシーンで読者を引きつけなければ終わり」とまで言われています。その理由は
「トップシーンを読んで『面白くない』と思われたら、その読者は途中で読むのを止める」 からです。
「読まれない漫画」は「終わり」です。
そうならないためにも、「読者を引き込む」「読者に『面白い』と思わせる」ための工夫や努力を、トップシーンの中に詰め込まなければならないのです。

そのためには具体的には
① とにかく「インパクト」をつける(絵的にも内容的にも)
② トップシーンの中に主人公のキャラクターをできるかぎり詰め込む
③ 「いつ・どこで・だれが」をちゃんと分かりやすく紹介する
の3点を注意して、トップシーンを作る必要があるでしょう。

次の「承」は、いわゆる「起=トップシーン」と「結=クライマックス」の間のことです。
ここがストーリーにおいては一番長いのですが、結局は
「どうやってトップシーンとクライマックスシーンをつなげるか」
を特に意識して「承」の中のシーン・エピソードは構成すべきです。 どうやって「承」の中を構成すべきなのかは、別の回でお話したいと思います。

転=クライマックス 結=ラストシーンとは?

「転=クライマックス」とは「その作品の中で、一番盛り上がる瞬間」のことです。
クライマックスは、「作品が終わる少し前」に入れるべきだと伝統的に決まっています。
なぜなら、「クライマックスを早めに出してしまうと、読者や観客が最後まで作品を読ん だり観たりしてくれないから」です。

クライマックスを「その作品の中で一番盛り上がる瞬間」にするためには、その瞬間を
「主人公が、その作品の中での最大の『行動』をおこなった瞬間」にするべきです。
 こちらも別の回でくわしくお話しますが、この世にある全てのストーリーは登場人物の「『行動』と『反応』のループ」で出来ています。
マンガだろうが映画だろうが、小説だろうがそれは同じです。  その作品の中で一番個性的で、魅力的な登場人物は主人公のはずです。
そんな主人公が行動をし続けることで、ストーリーは展開します。

そして、そのストーリーの中で主人公が「最大の行動」をした瞬間が、クライマックスであるべきなのです。
「最大の行動」とは何かと言えば、難しい言い方をすれば「その作品内での『テーマ』を達成した瞬間」となります。
そしてテーマとは、「(その作品の中で)主人公が実現したいこと」です。
「敵を倒したい!」「彼女と結婚したい!」「試合に勝ちたい!」
など、必ず主人公には「実現したい・やりたいこと」があるはずです。
それがかなうような行動をした瞬間が「最大の『行動』をした瞬間」になり、そこがクライマックスになるのです。

「結」は、ラストシーンのこと

「クライマックスの後の『反応』」「クライマックス後の余韻」
がストーリーにおけるラストシーンで、『起承転結』における『結』なのです。
余韻があるくらいの方が、読者にクライマックスやテーマがしっかり伝わります。

ラストシーンはクライマックスほど盛り上がらなくていいですし、盛り上がるべきではありません。ただ、クライマックスでの主人公の行動・活躍を受けての周りの反応は丁寧に描いて、読者に伝えるべきです。
そのためには自然に静かな、落ち着いたシーンにはなるはずです。
映画のラストシーンは、エンドロールやエンディングテーマと共に流れます。
それくらいの「流す・流れる」くらいの、じっくり読まなくても内容が伝わるような叙情的な内容が、ラストシーンらしいのです。

「ハリウッド式三幕構成」って?

また構成法としては、「ハリウッド式三幕構成」というのもあります。
ハリウッドと名前がついているように、米国の映画界で理論化された構成法です。
ハリウッド式三幕構成ではストーリーは、冒頭から順に「設定」「対立」「解決」の3つで分けられ、それぞれは「ターニングポイント」でつながります。主人公が各ターニングポイントで行動することで、ストーリーを新たな方向に転換させるのです。
ハリウッド式三幕構成と起承転結を比べると、以下のようになります。

設定 = 起
対立 = 承
解決 = 転・結

できるかぎり「設定」を紹介するのが「起」であるべきで、長い「対立」=「承」が続いた末に問題が「解決」するのが「転」なのです。
結局はどちらも、同じような構成法を述べていると言えます。

おわりに

 マンガもふくめたストーリーの構成については、まずは
「トップシーン(起)で出来るかぎり設定を出す」
「クライマックス(転)でテーマを描き、主人公が抱えている問題を解決させる」
の2点を意識して考えるだけでも、レベルが上がっていくと思います。
「意識」さえ高ければ、画力や経験に関係なく面白いマンガが描けるのです!