【連載】第七回 マンガの隠し味!?コマ割りに秘められた創作術(東町青従)
どうも漫画家の東町です!
今回はコマ割りについて解説していきたいと思います。
では早速いってみましょう。
コマ割り入門
まずは軽くコマ割りの要点・注意点だけ述べていきます。
図を参照にしながら読んでみてください。
Aは通常のコマ割りの例です。
横の線(オレンジのライン)は揃えます、縦の線(緑のライン)は段ごとにずらします。
1コマ目と2コマ目のように横に並ぶコマの隙間は狭く、2コマ目と3コマ目のように段が変わる時はコマの隙間を広くします。
目線は右から左へ横に読み進めてから、下の段に移動するので
先に読んでほしい横に並ぶコマの隙間を狭くすると覚えましょう。
Bのように横の線と縦の線を揃えてしまうとどちらに読み進めていいかわかりません。
読み進めてほしい方に揃えることを意識しましょう。
つまりCのような縦割りではまず下に読み進めてほしいので縦の線は揃えて横の線は揃えません。
1ページ3段6コマ、2ページで12コマが基本です。 それ以上割ると書籍化した時に読みにくくなるので、多くても1ページ8コマまでに抑えましょう。
ちなみにアプリなどのマンガはコミックスよりも小さいスマホで読まれる場合がほとんどなので、1ページ4~5コマになっていたりします。
続いて図DとEのように見開きで考えた時、今度は両ページの横の線(オレンジのライン)が揃わないように気をつけます。
揃えてしまうと、Dの3コマ目から一気に10コマ目に読み進めてしまう可能性があるためです。
続いて”断ち切り”について説明します。 これまで説明したコマ割りは全て基本枠に収まっていますが、基本枠の外側には断ち切りという余白があります。(水色のライン)
Dの1コマ目と10コマ目は基本枠から外にはみ出して描かれています。 このように断ち切りを使うことで見せたいコマを印象的に見せることができます。
ただし、真ん中の部分(緑のライン)は本の中心であるノドなので、ここは断ち切りを使わないようにします。
ここに描いても絵が見切れてしまい、せっかくの見せ場が台無しになってしまいます。
状況に応じたコマ割り
まずEのコマ割りは主人公を登場させる時に使います。
1コマ目で場所を描き、2コマ目ではキャラの位置がわかるように描き、
3コマ目でさらにアップにし主人公を登場させます。
脇役ならこんなにアップで登場させなくても大丈夫ですが、最低限キャラがどこにいて何をしてるかがわかりやすいように、 1コマ目と2コマ目のように場所とその次にキャラの全体が映るシーンを描いておくといいでしょう。
Fのコマ割りは場面転換の時に使います。
上段を横割りの大ゴマにし、下段には縦割りと横割りを入れてます。
横割りから縦割り、縦割りから横割りに変化させることで時間の経過や場所の変化を表現できます。
余談ですが「4ページに1回場面転換しないと読者は飽きる」とも言われています。
場面転換ができない時は構図や展開に変化をつけて飽きさせないようになるべく気を付けたいものです。
次にGのコマ割りでは、小さいコマからだんだん大きなコマにしていくことで、一番最後の大ゴマを印象強く魅せることができます。
気持ちが変化した時や、何か決断した時の表情を見せたい時に有効です。
そしてHのコマ割りでは、斜め割りを使っています。 コマを斜めに割ることで不安や緊張を演出したり、動きのあるシーンに使うと躍動感が出ます。
主に縦の線を斜めにすると緊張や不安、 横の線を斜めにすると動きが表現できるようです。
ただそれ以外の時に多用しすぎると読みにくくなるので、使う時と使わない時のメリハリをつけるようにしましょう。
あとはコマ割りを斜めにしなくても、絵の構図を斜めすることで不安や緊張を表したり、動きをつける方法もあります。
以上が基本的なコマ割りです。
あとはどう見せたいかによって好きなように割って大丈夫です。
紹介したのは一例にすぎないので、好きなマンガを参考にアレンジしてみてください。
ポイントはキャラがどこにいて何をしてるかが読者にわかるように「場所とキャラ全体が映るようなロング」と、 「キャラの表情や仕草で感情を伝えるアップ」をバランスよく使い分けることです。
初心者によくありがちなのは、
バストアップばかりの顔だけマンガや、
ロングショットばかりでキャラクターの気持ちが伝わってこないようなマンガです。
そのページの見せたいコマに焦点を絞って、そのコマを一番の大ゴマにしてから他のコマを配置していくと決めやすいです。
そして最後のコマに次のページが気になる”引き”になるようなシーンを持ってくるといいでしょう。
構図・カメラアングルの決め方
そのコマで「何を見せたいか」によって構図が決まってきます。
アオリと呼ばれる「低い場所からカメラを上へ向けた時のような見上げる構図」は、
対象を大きく見せる効果があるので、キャラクターか何かを主張したり迫力を出したいシーンなどで有効です。
続いてフカンという「高い場所からカメラを下へ向けたときのような見下ろす構図では、
ものの位置関係やキャラクターがどこで何をしているかなどの状況を伝えたいときや、
キャラクターがたった一人でポツンといる寂しそうな感じを出したい時にいいでしょう。
また斜めのアングルはコマ割りの場合と同じく、
不安定さや動いている感じを出すことができる構図です。
裏を返すと水平のアングルでは安定感を伝えることができるので、 物語の序盤の会話やシーンなどはアングルを崩さずに淡々と伝え、
ハプニングなどここぞという時に斜めにすれば雰囲気を一変させることができます。
動くのはカメラではなくキャラクター
これは荒木飛呂彦先生の言葉です。
主人公が左にいる人と会話をしてれば、自然とカメラアングルは主人公の左横顔になるはずです。
主人公が相手を見下す感じを出したいときはさらに斜めアオリを加えてみてもいいです。
しかし会話の途中でいきなり右横顔のアングルになったらどこの誰と会話してるのかがわからなくなってしまいます。
キャラクターの動きをカメラが追う感じをイメージしましょう。
表情を伝える
そして一番重要なのは表情です。
表情を伝える時には基本的にアップになるかと思います。
つまりキャラクターがどんな感情でそのセリフを言ってるかということですが、
同じ「さよなら」でも、
笑っているのか泣いているのかでは与える印象がまるで違います。
会話が続いて顔のアップばかりが続きそうな時は、顔以外で感情を表現するのも有効です。
こぶしをギュッと握ることで怒りを表現したり
目の色を白くして喪失感や悲しみを表現したり
はたまた雷雨などで不安や緊張を表すのもいいでしょう。
さいごに
このようにコマ割りにはそれぞれ意味があり、視線誘導などを含め読者を飽きさせない工夫がされています。
どうしてもイメージが湧かない場合には、このコマはあのマンガ(映画やドラマでも可)のあのシーンと一緒だ!と思い浮かべれば自然とどんなアングルにすればいいかわかるようになってくると思います。