【連載】第一回 ヒーロー不在?時代とキャラクターの変化(東町青従)
はじめまして!マンガファクトリー・マンガ家の東町です。
魅力的なキャラクター、絵、構成や展開とはどういうものなのか、 この連載ではマンガについて様々な角度からアプローチして迫ってみようと思います。
これから広告マンガを依頼しようとしている人の参考になれば幸いです。
また、そうでないという人にも楽しんでもらえるように音楽やスポーツなど、マンガ以外のことにも触れながら進行していきますのでよかったらお付き合い下さい。
連載初回の今日は漫画において最も重要な「キャラクター」についてお話していこうと思います。
時代とキャラクター
ドラえもん、「ドラゴンボール」の孫悟空、「ハイキュー!!」の日向翔陽、「弱虫ペダル」の小野田坂道など これまで数え切れないほどのキャラクターが生まれて親しまれてきました。
ですが、 このキャラクター達はここ10年~20年で時代とともに変化しているのです。
ひと昔前の主人公の多くは最初から強いスーパーヒーローだったのに対し、 現代の主人公はどちらかと言うと最初は平凡な、より読者に近い存在になりました。
では、 なぜそんな変化が起こったのでしょうか。
ここ10年~20年でパソコンやスマホが急速に普及し、誰でも簡単に自分の意見や作品を発信できるようになりました。
つまり”誰もが主役になれる時代になった”ということです。
そこで最初は読者に近い存在として主人公を登場させることにより、読者は共感して感情移入することができ、 「この主人公は僕(私)だ!」と主人公と一緒に物語を体感できるようになったのです。
そして、この変化はマンガの世界だけに留まりません。 ビジネスやスポーツの世界にも同じことが言えます。 続いてはそちらの様子も少し覗いてみましょう。
アイドルに見るキャラクターの変化
例えば、秋元康さんがプロデュースする国民的アイドルグループAKB48も例外ではありません。
有名人やアイドルもキャラクターと言えます。 以前までのアイドルは山口百恵さんや松田聖子さんなど、 若くして完成された美しさと歌唱力をもった”手の届かないスター”だったのに対し、 AKB48は握手会などで”会いに行けるアイドル”という、私たちにとってより身近な存在になりました。
そして、今のアイドルの多くは自分たちの冠番組を持ち、テレビで歌って踊る以外にも普段の生活やアイドルとしての悩みなどを見せることで、さらに共感を呼ぶようになったのです。
ビジネスから学ぶキャラクター創造論
アイドルやタレントがライブ配信して視聴者とコミュニケーションを楽しむWebサイト「SHOWROOM」は、 日本で2017年上半期動画配信アプリランキングで収益1位となったコンテンツで、
その運営をするSHOWROOM株式会社の代表取締役社長である前田裕二さんは、今大注目の若手実業家です。
その「SHOWROOM」ですが、 最初は芸能人による配信のみが行なわれており一般ユーザーが配信することはできませんでした。
しかしそれでは一時的に視聴者数が伸びても継続的に視聴者を増やせなかったのです。
そこで、一般ユーザーが自由に配信できるようにし、 加えて配信者の貢献度に応じてSHOWROOM全体の売上げから金銭を分配する制度も導入、
また視聴者から配信者へのコメントや、ギフトアイテムを送れる「ギフティング」と呼ばれる機能によって配信が盛り上がるようにしました。
そうして配信者が視聴者にとって身近な存在となったことで共感して感情移入しやすくなり、 視聴者が配信者と一緒に夢を叶える物語を追体験できるようになったのです。
スポーツ界にも及ぶ人気者(キャラクター)の変化
2018年の夏、記念すべき第100回目の全国高校野球選手権大会。 決勝では大阪桐蔭の春夏連覇、金足農業の東北勢初優勝とどちらが勝っても”初” になる試合で日本を沸かせました。
ですが話題となり人々の印象に残ったのは優勝した大阪桐蔭よりも、惜しくも破れた金足農業の球児達でした。
一体それはなぜでしょうか。
理由は全国から野球のエリートを集めた大阪桐蔭とは対照的に、金足農業は選手全員が地元の秋田出身だったということです。
勘のいい人はもうお気づきだと思います。 金足農業の選手達は私たち一般の人に近い存在だったのです。
多くの人は県外の学校には行かず地元の学校に進学しますから、大阪桐蔭の選手達は遠い存在になってしまいます。
逆に金足農業の選手達には共感し感情移入しやすくなります。
以前なら、松井秀喜選手や、松坂大輔投手など怪物と呼ばれる様なスター選手が話題となり人気を呼びましたが、 時代が変わった今、スポーツの世界でもこのように変化が起こっています。
巡る時代とキャラクター
時代とともに変化してきたキャラクターですが、これらのお話に共通していることがあります。
それは”その場所だけのスターを生み出す”ということです。
すでに有名な人を他所から引っ張ってきても大爆発は起きません。 かつての週刊少年ジャンプがそうであったように。
ジャンプ創刊当時すでにマガジンやサンデーがあり、他所からスターを引っ張って来ることができませんでした。
そこで、 一から新人を育成することに賭け、共に成長し新たなスターを生み出したのです。
時代は流れ雑誌は廃刊が進み、今やアプリのマンガが伸びてきています。 このアプリという新たな場所で次世代のスーパーキャラクターが現れるのはそう遠くないのかもしれません。
おわりに
ずっとマンガを描いてきて、いまだに毎日成長を実感させてもらっています。 現在も勉強中ですので、まだまだ人に教えられることはないと思っているのですが、 今まで学んだことを書き残せるチャンスだと思い、自分のためにこの連載を引き受けることにしました。
でもそれが結果的に誰かの役に立ってくれたらいいなという願いを込めて全力で書いていきますので、気が向いた時にまた覗いてやってください!